「こころの家」 キム ヒギョン文 岩波書店

あぁ、この手があったか、と”本をめくる”動作を見事に使った絵本。見開きには「この絵本はちょっと変わっています。ページをひらいたりとじたりすると、絵がうごいているように見えます。ページをゆっくりめくりながら、絵を見てください。おばあさんが赤ちゃんにほおずりしたり、ハトがつばさをはばたかせたり、だれかがやさしく、きみを手まねきしたりします。」とあります。ページをめくるときの紙のたわみによって絵が動くのだ。開いたページの真ん中の折目が絶妙にレイアウトされている。絵が動き、心が揺れ、絵だけで意味に深みが加わる。・・・・のに、文がたたみかける。「こころ」について意味深い言葉が記されている。文を書いたキム ヒギョンさんと絵を描いたイヴォナ・フミエレフスカさんのコラボレーションとあるが、私には、文がとってつけたようにしか感じられない。

見えないこころを家に例えて、様々な心の在り様が書かれているのだけれど、絵のしかけが見事すぎて言葉が宙に浮いている。と感じてしまう。こんな風に感じるのは、私だけかなあ。そうだ、この文でなくても絵から感じる言葉を自分でみつけてみるのもいいのかもいしれない。この絵本は読み聞かせするんじゃなくて、ひとりでじっくりめくりたい。中高生にもおすすめ。

                         2013年10月1日 記

「夜はライオン」長薗安浩 作   ゴブリン書房

長薗安浩さんの名前を知ったのは、「新しい図鑑」から。学校図書館応援団長(私が勝手に命名してる?)の伊藤さんからお勧めのメール配信があったから。伊藤さんは児童書をこよなく愛し、立場の弱い学校図書館司書を元気づけてくれる最強の味方! 私はこの読書メール《おっさん化炭素通信》がとっても楽しみの一人ですが、最近メール来ませんねぇ。伊藤さん待ってます!

 ところで、新刊の『夜はライオン』ですが、小6でまだおねしょしている男子、ぜひ読みたまえ。(強気の上から目線だ・・・)成績優秀で野球少年なら、なおピッタリ。おねしょと格闘する話は割と少ないんじゃないかしら。最大の難関修学旅行にむけておねしょ防御のあの手この手は切実です。笑ってはいけません。修学旅行の夜、転校生の今泉くんと橋の上で「いざ、放尿!」のラストシーンがイイ!大人の思惑と男子のプライド、受け止めたい。

 前から感じているんですが、最近小学男子にお勧めできる本が少ない?・・・女子に勧める本はよりどりみどりなのに・・・長薗氏は男性で小学男子を描く数少ない(?)作家なので注目です。

                         2013年10月6日