「かさねちゃんにきいてみな」有沢佳映(講談社)

いやぁ~、参りました。私はこの手の話に弱かったんだと、再認識。気持ちのツボ(ってあるの?)をぎゅっと握られた感じ。この感じは絵本でいうと「あのときすきになったよ」薫くみこ作とか、「はせがわくんきらいや」長谷川集平作のあたり。どこが?と言われても困る全く自分メーターですが・・・

 ユッキーこと上原孝行少年(小学五年生)の日記という設定なので、実に読みにくい。「ヒナンをムシしたマユカは」とか「しんぴ的だ」とか小五の使える漢字そのままの文。しかも半分以上会話文。会話文で状況を推測していくのって結構きつい。それに勝るのが小学生のオバカパワーとかさねちゃんの魅力です。

 全編登校中のみの話。五年生のユッキーはかさねちゃん卒業後、来年班長になることになるのは確実で、11月から絶望している。登校班のメンバー8人は選りすぐりの個性の持ち主だから。

 特筆のリュウセイ(四年生)は特別我慢のできない子。一日おきくらいにゼッキョウが五年生の教室まできこえるし、一週間に一回はバンソーコーじゃ間に合わないけがをしてるし、一週間に二回はケガもしてないのに先生二人がかりで保健室に引きずられてってる。

 ミツ(一年)はリュウセイに似ていて、かんしゃくをおこして放置自転車を全部けりたおしたりする子。カリスマ班長のかさねちゃんがあてにされて他の班から押し付けられた。

 のんたん(二年生)はにおいとかに敏感で鉄の匂いや汚れるのダメ。

 太郎(三年生)二郎(二年生)の兄弟は忍者大好きのゼッキョウパワー。そしておしゃれなマユカ。

 このメンバーの班長かさねちゃんは一度もうんざりって顔をしないとこがすごいとユッキー(オレ)は思っている。

私もすごいと思う。学校現場にいると「リュウセイ」が一人、二人いる。現場で直面すると、平静を装いつつほんとにどうしよう・・・ってオタオタしてしまってた。ひたすらクールダウンするのを待つしかなかったのに、かさねちゃんはすごい。「リュウセイちゃんとして」の魔法の呪文が使える。しかも言葉のわからない赤ちゃんに謝ろうとしないリュウセイに

「言葉は通じないから、謝らないっていうなら、リュウセイはたとえばアフリカ人からのスワヒリ語での謝罪はうけいれないってこと?」

なんて言える子なのだ。

 会話文の中で、徐々にリュウセイのおかあさんの育児放棄らしい状況が明らかになってくるあたりが山場だろうか、厄介なリュウセイなのにメンバーのリュウセイへの気持に胸がいっぱいになる。

 読みながら、どうしたらかさねちゃんのようになれるんだろう?という思いがフツフツと湧き起こる。

ユッキーが最後に質問する。

「かさねちゃんは、なんでリュウセイとうまくやれんの」

どうぞその答えを読んでみてほしい。

これから先も大切な一冊になりそうなこの本を教えてくれた、司書の遠藤さん、ありがとう!              (2014年2月26日)